覇権はイギリスからアメリカへ。1929 年世界大恐慌が金本位制の自動調節メカニズムを破壊し、
管理通貨制と国家独占資本主義が誕生する。ニューディール・ナチス・ブロック経済化を経て第 2 次大戦へ。
アメリカは 現時点での生産力段階を代表する国。 第 1 次大戦後、覇権はイギリスからアメリカへ移行する。 世界大恐慌後に アメリカを典型として誕生したのが国家独占資本主義であった。
1929 年:ニューヨーク株価大暴落 → 世界大恐慌。過剰生産と消費不足(最終的な解決は ニューディールか 世界大戦だったか)。
これまでの経済学の常識とされてきた、賃金切り下げ → 企業業績回復・輸出競争力回復 → 貿易黒字(決済「金」の蓄積)→ 金融緩和 → 設備投資 → 景気回復・雇用拡大・賃金上昇 という 金本位制の自動調節メカニズムが機能しなくなってしまう。
賃金切り下げ・雇用縮小=失業をしばらくの間我慢すればやがて景気は回復してくるという経済政策は失敗し、 賃金切り下げ・雇用縮小はデフレ・スパイラルをもたらすだけだった。 → ケインズ経済学の登場。
第 1 次世界大戦後、世界最大の生産力を有するとともに最大の債権国家となった アメリカの世界経済運営の失敗であったとみる見解がある (G. チブラー『世界経済と世界政治:崩壊と再建 1922−1931』みすず書房)。
経済のファンダメンタルズを無視した 金本位制復帰(第 1 次世界大戦によって各国は 金本位制から離脱していた)に無理があったか。日本における金本位制復帰についての議論は 石橋湛山による「新平価復帰論」がある。
大不況によって各国は再び金本位制から離脱する。国家による管理通貨制へ移行 (国家が財政政策の自由度を獲得する)。第 2 次世界大戦後は金とドルとのリンケージ(交換)を前提とした アメリカ・ドルを基軸通貨とする国際金融システムが構築されることになる(IMF 体制)。 → 1971 年金ドル交換停止(ニクソン・ショック)で変動相場制に移行してしまう → 貿易取引金額を遥かに上回る資本取引が世界を覆う(金融 > 実体経済)。
19 世紀末から第 1 次大戦まで、イギリスを中心とした多角的貿易決済機構 と 国際金本位制 が世界経済を回していた。
ヨーロッパ・アメリカへのイギリスの貿易収支赤字を補填したのが インドとの貿易収支黒字。 欧米諸国が食料・原料輸入の見返りとして一次産品諸国へ輸出しなくても済む。 その結果、イギリスが欧米への支払い危機から免れる。
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円滑な資金循環を通して財・資本がイギリスに蓄積されていく
(世界貿易の資金循環の要としての基軸通貨国イギリス)
各国が自国通貨を金とリンク(金保有量に応じた通貨発行)→ 為替の安定と貿易決済の円滑化 → 貿易の一層の拡大。世界金融の中心としてのロンドン金融市場(ポンド=基軸通貨・国際通貨)。 景気循環に伴う金の流出入を媒介にして各国の好況が世界的好況に連動。
帝国主義段階の列強は、外部への膨張 によって内部矛盾を解消しようとした。 その対立が 第 1 次世界大戦 に帰着する。
「帝国膨張路線」:自由貿易堅持・シティの利益=貿易・金融の中心国の地位を維持。海外投資の増加によって貿易外収支の黒字を拡大。
「帝国関税同盟」:高率関税で工業を保護。帝国内は特恵低関税で自由貿易を促進。保護関税を財源として社会保障制度を拡充(→ 労働者の統合)。
結果は 前者(「帝国膨張路線」)の勝利の下での社会改革路線の受け入れ → 地主負担での社会政策と海軍拡張(人民予算)。対外的には海外投資型=植民地・農業国収奪型の性格を強める。 国内的には地主利害の犠牲のうえに 福祉国家化を推進する(国民統合型=民主型)。
利子収入をめざしたロシアへの資本輸出 ← フランス帝国主義の 高利貸的性格とフランス植民地の経済的限界。社会政策と政治的社会的民主化の推進(第三共和政)。国民統合型=民主型帝国主義。
ユンカー(土地貴族)支配の社会的権力構造。ブルジョワジーの「貴族化」。 家父長制的な労使関係 → 労働運動を抑圧。強度の資本蓄積は国内に激しい社会的摩擦と 抵抗を引き起こす。内的不満の対外転嫁 → ドイツ帝国主義の 攻撃的・侵略的性格。
第 1 次大戦は アメリカを世界最大の生産力と債権国に 押し上げ、 覇権交代 をもたらした。
ヴェルサイユ体制とワシントン体制(帝国主義の世界体制の維持強化): ヴェルサイユ体制=賠償金その他によるドイツ制裁、敗戦国の植民地の委任統治を通じた戦勝国による分配・支配。 ワシントン体制=対日抑制と極東における新たな勢力均衡をめざす。列強の極東における既得権益の承認=民族運動に敵対。
ケインズは 『平和の経済的帰結』で対独賠償請求を告発。 ドイツの客観的な支払い能力は 400 億マルクなのに対して、賠償金は 1,320 億マルクに ものぼった → ドイツ経済は賠償金に圧し潰されて破綻(ハイパーインフレーション)。
ドーズ案(1924 年)を契機にアメリカから資本流入が起こりドイツ経済は立ち直る。 この資本流入が途絶えれば賠償・債務支払いができないという 構造的脆弱性を抱える (アメリカの資金供給が不可欠)→ 世界経済は回復と成長に向かう(「相対的安定期」)。
アメリカ経済は 「繁栄の 10 年」を迎える。自動車・住宅・電機などの耐久消費財産業の成長。
世界大恐慌の前史は 「農業問題の拡大」と「世界資金循環の破壊」。 この 2 つが連鎖して、1929 年の株価大暴落から世界規模の恐慌へ広がっていく。
第 1 次大戦は食料・原料生産の双方で 一次産品諸国に強い刺激 → 作付面積の拡大 (北米・オーストラリア・アルゼンチン・東欧:穀物生産の増加。東南アジア:ゴム。ブラジル:コーヒー。 キューバ・インドネシア・フィリピン:砂糖)。
戦争終結でヨーロッパ諸国の支払い手段は枯渇 → 対外農産物需要の減少 → 戦後農業恐慌の発生(1919〜1922 年)。アメリカで特に激しい農業恐慌となる (過剰生産と穀価下落)。1922 年フォードニー・マッカンバー関税=農業保護関税の実施。
ヨーロッパ諸国は農業保護関税による農産物自給化政策を推進(戦争の経験に基づく食料戦略・農民保護政策) → 国際農工分業体制は壊れていく。一次産品諸国は生産調整ができず、 一層の生産拡大に突き進んでいく。
アメリカの経済構造・貿易構造が持つ問題点:広い国内市場と低い貿易依存度 → 農業・工業とも輸出超過 → アメリカは継続的な資本輸出によってドルを散布し続けなくてはならない。 戦後の新多角貿易の安定性・継続性はアメリカの資本輸出が握っていた ← 債務国の債務が累積するだけで不均衡の問題は未解決のまま激化。 孤立主義的に自己の利益を追求するアメリカ=中心国として世界の円滑な資本循環をリードする 責任感に欠ける。
管理通貨制への移行で 国家が財政自由度を獲得。 アメリカ=ニューディール、ドイツ=ナチス、日本=高橋財政 ― 3 つの異なる「国家独占資本主義」の型 が並行して生まれる。
処方箋としての 有効需要創出政策(スペンディング・ポリシー)。理論的支柱としての ケインズ経済学。経済政策への強力な国家干渉。雇用創出のための経済政策、 失業対策・公共事業(TVA)。 労働者の権利強化・労働組合設立促進。 農産物価格支持制度による農業保護(農業調整法 AAA)。 価格政策はアメリカから。
市場統制的性格と反労働者的性格。大規模な財政赤字と軍需生産の拡大の結合。 没落する中間層を政治的背景に ナチズムが台頭。 イタリアでは ファシズムが台頭 → 日独伊三国同盟を締結 → 第 2 次世界大戦へ。
救農土木事業の実施(農村の失業対策事業)。 国債の日銀引受 → 軍需を抑制することができなくなる(二・二六事件)。 貧困に喘ぐ農民層を政治的背景として全体主義・軍国主義へ。
ソヴィエト社会主義(大恐慌の影響を全く受けない・失業問題が生じなかった)への対抗としての 福祉国家へ(課税強化・所得再分配)。トマ・ピケティ『21 世紀の資本』みすず書房を参照。 第 2 次世界大戦および欧州大陸荒廃による食糧不足を背景にアメリカ農業は生産力をさらに高めていく → その後の農産物過剰問題の引き金に。
日本の高橋財政は 救農土木事業で農村の失業対策を行ったが、 財源として 国債の日銀引受を行ったために、後に軍需財政を抑制することができなくなる。 この構造が 二・二六事件(1936)を生み、貧困に喘ぐ農民層を政治的背景として 全体主義・軍国主義へと突き進んでいく。
ドイツ(ナチズム)も日本(軍国主義)も、救済されなかった農民・中間層を政治的基盤とした 全体主義であった点で共通する。世界大恐慌は経済の危機にとどまらず、政治体制そのものを 変えてしまったのである。
世界経済は 3 つのブロック(スターリング/ドイツ広域経済圏/米州互恵)に 分断される。これが 第 2 次世界大戦の経済的前提となる。
オタワ会議(1932 年)によるスターリングブロックの形成。 帝国内貿易の拡大と為替の自由取引の確保 → 世界貿易縮小と多角決済ルート閉止。
外国為替の中央銀行への集中:外貨は対外支払いに充てられる → 資本流出の制限から 貿易統制のための手段 (双務清算協定の手段)に変質。金や自由為替を使わない貿易決済関係(東南欧、南米)。 東南欧はドイツへの食料・原料供給基地、工業製品市場として従属。 マルク残高がドイツの為替管理によって封鎖:国際決済手段として使えない。 二国間の輸出入の均衡が原則=出超国はドイツ工業品を輸入するしかない。 ← 相手国と他の工業国との関係を切断するもの。 経済的自立を奪ってドイツの農業地方と化すことを目的としている。 自給自足経済圏(アウタルキー)を目指す政策。
互恵通商協定法(1934 年)=自由多角貿易主義への転換。 貿易制限を軽減する通商協定を締結していく=「門戸開放」路線。 ← ヨーロッパ諸国の中南米に対する輸出攻勢とブロック化傾向への対抗。 中南米をアメリカの輸出市場として確保する差別主義とブロック化傾向。 アメリカの通商を差別する国に対しては 無条件最恵国待遇を取り消す → 通商差別を取り除くことなく市場分割競争を激化させた。
国家独占資本主義は 「市場の失敗」を国家が補う体制 として誕生し、 第 2 次大戦と戦後 IMF 体制を経て、現代まで形を変えながら続いている。
金本位制 + 自由貿易 + 夜警国家
市場の自動調節メカニズム
イギリスを中心とする多角的貿易決済
植民地獲得競争 → 第 1 次大戦
管理通貨制 + ブロック経済 + 強い国家
有効需要創出政策(ケインズ)
農産物価格支持・労働者宥和・福祉国家化
3 ブロック対立 → 第 2 次大戦 → IMF 体制
今回の授業では、世界秩序の中心に位置するアメリカの役割というのが 1 つのテーマになるかと思います。 自分に都合の悪いルール(WTO はそう見えているのでしょう)は力任せに変えようとする ジャイアン(笑)にどう箍をはめるか、あるいはリーダーとしての自覚をもってもらえるかどうかという 問題は現在も続いています。
新大陸 vs 旧大陸という構図も現在に継承されています。 「人は変わらない」「人は変わる」のどちらに皆さんは軍配をあげますか。
「金は天下の回りもの」という格言をケインズが聞いたらどのように反応したでしょうか。 金本位制で委縮した経済を活性化する処方箋ですが、政府の財政赤字が気になります。 コロナウイルス対策以降の大盤振る舞いの結果として残る国の負債は結局どうなるのでしょう。 若い皆さんが引き継がれるのでしょうか(泣)。インフレーションで帳消しでしょうか。